彼等の描写。
 まぶしく、凝固したひかり。






















 わたしは世界から浮いている。絶対的な筈の時間と空間は意味を持たず、わたしは世界から乖離して行き着く岸を未だ見ないまま、世界の何処かをふわふわと漂泊する。
過去と未来と現在。直線上に並び、個体の死という形で完結する筈のわたしの時間は、ある日突然ぷつりと途切れ、また唐突に何処かから始まる。 途切れ、始まる瞬間、私は何か途方も無い大きな力で世界から引き剥がされ、時間がわたしから乖離していくのを感じる。
 そうして時間はわたしを未来ではない何処かに押し流す。


 わたしはわたしの寄る辺を知らない。


 漂着できない。岸は未だ見えず、遠いのか近いのか、自分が何処を漂っているのかさえ分からないままわたしは腕を伸ばす。触れられない。


 世界から乖離する。


 誰かわたしをしっかりと掴まえていて欲しいと思う。繋いで、閉じ込めて、じっと蹲っていたい。 そうじゃないとわたしは、雲みたいに何処かに流れてしまう。ある日突然、消えてしまう。わたしは安定したい。 確固たる何かで繋がっていたい。繋がれたい。世界と繋がりたい。


 世界の何処かで出会う人達は色々な理由でいつも戦っている。 何かを守るため、変えるため、信じるもののため。 彼らは、まぶしく輝く、凝固したひかりのようにわたしには見える。 彼らは世界と繋がり、確かな背景とそれに裏打ちされた歴史を持ち、それぞれの岸を自分の脚でしっかりと踏みしめていた。
 彼らは世界に馴染み、繋がっている。わたしは、彼らと繋がりたいと思う。それは、果てしなく広がる海に突き出た岩礁に似ている。


「ここで会ったのも何かの縁だし、わたしを守ってくれません?」


 わたしは岩礁に掴まる。潮が満ちればまた漂泊しなければならないことを知っている。 永遠にいられるわけもない事をしっていながら、わたしは腕を広げ指を伸ばし、その確かな感触に触れる。においをかぐ。音を聴く。 両脚で立つ。わたしは知覚するもの全てに寄り添おうとする。
 まぶしく凝固したひかりがわたしに微笑む。


 彼らは世界と繋がり、わたしは彼らと繋がる。世界と繋がる。


















06,10,20